時事・社会

テイコウペンギン「某企画」VS国家公務員「中央省庁」、どっちがブラック?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

★この記事で分かること★

  • テイコウペンギンに登場する「某企画」のブラックっぷり
  • 霞が関の国家公務員のブラックっぷり
  • 国会対応に苦しむ国家公務員の厳しい現状
  • 「某企画」と「霞が関の中央省庁」はどちらがブラックか

皆さん、こんにちは!けんた@ロスジェネ青春マガジン(@lost_gene_mag)です!

YouTubeなどで人気を博しているアニメテイコウペンギン」。ブラック企業を、コミカルな動物たちを登場させながら描いた、人気シリーズです。

このアニメの中に登場するブラック企業「某企画」のブラックっぷりは、アニメながらに悲惨だと感じるわけなのですが…

一方で、かつて霞が関の中央省庁と一緒に仕事をしていたときの私の経験からすると、

けんた
けんた
霞が関の中央省庁って、実はテイコウペンギンの「某企画」よりもブラックなんじゃないの?

という疑問を持っています。

そんなわけで、本日は、霞が関の中央省庁と仕事をして、国家公務員の実情を理解している私が、テイコウペンギンの「某企画」と霞が関の中央省庁、どちらがブラックかについて、考察させていただこうと思います。

テイコウペンギンとは

テイコウペンギン」は、「とりのささみ。」氏によりTwitter上で連載されているショート漫画と、およびそれを原案とするYouTubeアニメの総称です。

もともとは、Twitterでのマンガで人気に火がつき、それをきっかけにYouTubeでアニメがスタート、こちらも高い人気を誇っています。

ブラック企業「某企画」で働く、主人公のペンギン。自分は仕事をしないくせに偉そうな「上司」に監視されながら、同僚のパンダ、シャチとともに過酷な日々に「テイコウ」しながら生き抜く、動物たちのお話です。

ちなみに、このテイコウペンギンの主題歌「自由への距離」は、楽曲、アニメともに秀逸で、「テイコウペンギン」の世界観を見事に表現しています。

よろしければ、こちらもぜひご覧ください。

テイコウペンギン「某企画」のブラックぶり

さて、このアニメで、主人公のペンギンたちが働く企業「某企画」は、常軌を逸したブラック企業として描かれています。

それでは、具合的にどれくらいブラックなのか、以下で見ていきましょう。

業務量が多すぎて連日深夜まで残業

「某企画」は、巨大ロボットの製造、宇宙進出、遺跡発掘、ごみ収集など、非常に幅広い業務を手掛けている、いうなれば総合商社です。

そのため、業務が非常に多岐にわたる上、その業務量も非常に多くなっています。

一方で、抱えている業務量の割に従業員数は明らかに少なく、数少ない社員であるペンギンたちは連日、深夜までの残業をこなしながら、何とか日々の仕事を回しています。

サービス残業は当たり前

そして、その残業については、当然のように残業代は支給されることがなく、全員がサービス残業を余儀なくされている状況です。

労務管理をしている上司も、当然のようにサービス残業を容認しており、ペンギンをはじめとする動物たちは、ただ絶望しながらも、日々の業務をこなしているのです。

「アットホームな職場」

そんなブラック企業「某企画」ですが、求人は詐欺同然の美辞麗句を並べ立てており、期待に胸を膨らませて入社する人もいる様子。

そのため、そんな求人票の内容に期待して入社したものの、実際はここまで述べたとおりのブラック企業なので、多くの新人たちはあっという間に辞めていきます。

なお、そんなブラック企業を象徴する言葉が「アットホームな職場」。あまりにも労働時間が長すぎて、むしろ職場が家のようになっていることを表しています。

霞が関の中央省庁…国家公務員のブラックぶり

一方、この「某企画」と比べて、霞が関の中央省庁で働く国家公務員はどうでしょうか。

「9時5時の5時は朝の5時」

一般に、公務員というと「定時で帰れる」「安定している」というイメージが非常に強いですが、実際の公務員は、そんなに楽なものではありません

特に、

霞が関で働く国家公務員については、労働時間が常軌を逸している

こういった事実は、近年霞が関の現役公務員たちがSNS等で積極的に声を上げるようになったこともあり、広く知られるようになりました。

そうした、霞が関の国家公務員の労働状況を端的に表す、有名な言葉があります。それが、

「9時5時の5時は朝の5時」

です。

一般に定時で帰れることを表す「9時5時」という言葉ですが、国家公務員の場合は、連日にわたる深夜勤務が常態化しており、帰れる時間が午前5時になることはザラ。

そういった状況を、国家公務員の皆さんは「9時5時の5時は朝の5時」と呼んでいるのです。

国会対応で超過勤務が常態化

では、なぜ、霞が関の国家公務員は、連日にわたってこのような異様な労働時間が当たり前になっているのでしょうか。

もちろん、各府省庁によって背景は異なるのですが、1点、各府省庁に共通する理由があります。

それが、

「国会対応」

です。

夜遅くの質問通告、深夜の答弁作成、早朝の大臣レク

国会対応とは、ざっくりいえば、

国会の本会議や委員会などで行われる質疑応答に向けた、国会議員と各府省庁との事前調整

です。

国会中継などで見られる質問と答弁のやりとりですが、あれは実は質問側・答弁側ともに事前に原稿が用意されています。

その原稿は「質問通告」と呼ばれる形で国会議員から提供されることになります。

この「質問通告」が早めに提供されていれば、事前準備ができるので、対応のしようもあるのですが…。

多くの場合、通告を国会議員が内閣に提供するのは、前日の夕方とかになってしまいがち。

こうなると、国会の質疑は翌日に行われるわけですから、その日の夜に答弁原稿を作成しないといけなくなります。

この答弁原稿の作成、質問の数が大量になると、それだけ負担も重くなります。

また、複数の府省にまたがるような案件だったり、答弁者が内閣総理大臣だったりすると、府省間や時には官邸(内閣総務官室)も交えた答弁の調整にも時間がかかってしまいます

加えて、「そもそも質問の趣旨が不明確」といった、質の悪い通告しかこなかったりすると、真意を確認するのにも時間がかかります。

こうして、霞が関では深夜から未明に至るまで、国会質問の答弁作成に追われることになるのです。

「質問主意書」の対応も重い

加えて、国会法に基づき、国会議員が文書で内閣に質問を行うことのできる「質問主意書」というものがあるのですが、これもまた、国家公務員の労働時間を肥大化させています。

質問主意書が国会議員から提出されると、7日以内に答弁書を国会に返さないといけないのですが、この質問主意書は

  1. 内閣法制局の審査
  2. 与党国会対策委員長への説明
  3. 閣議決定

という重厚なプロセスを経ないと回答ができないため、これらを7日以内で処理するというのは、国家公務員にとってかなりの負担となります。

加えて、この「7日間」という制限のことを思うと、1日たりとも無駄にはできないので、国家公務員の皆さんは、「その日は自分の担当案件で質問主意書が当たらない」ことを確認しないと帰れないというのも通例化しています。

先述の国会答弁に加えてこの質問主意書対応がダブルで当たってしまったりすると、とてもまともな時間には帰れない…どころか、何なら1週間泊まり込みで対応せざるを得ないこともあるほどです。

こちらもサービス残業は当たり前

そして、これだけの超過酷な労働の対価として、残業代がしっかり支払われていれば、まだかろうじて救いはあるのですが…

省庁によって若干の差はありますが、

霞が関で働く国家公務員の残業代については、各組織で上限が設定されており、それを超えるとサービス残業になる

という運用が基本です。

そして、その残業代も、府省やその中の部局・課によって異なりますが、「月20時間程度」とかいう、実情に比して明らかに少なすぎる時間分しか与えられていません。

「9時5時の5時は朝の5時」の残業代は…

実際に計算してみましょう。

たとえば「9時5時の5時は朝の5時」で仕事をしていると、1日の残業時間は12時間。これを月22日とすると、残業時間は264時間に及びます。

月264時間、仮に時間単価を1,500円とすると、月396,000円の残業がもらえることになるのですが、上限が20時間にセットされていると、もらえる残業代は、わずか30,000円です。

これが、霞が関で働く国家公務員の実態です。

「某企画」と霞が関の国家公務員を比較

それではここで、「某企画」と霞が関の国家公務員について、比較してみましょう。

某企画 中央省庁
労働時間 深夜までの残業 翌朝5時まで残業(9時5時の5時は朝の5時)
サービス残業 あり あり
残業の主な理由 さまざまな分野にかけて幅広い業務を展開しており、業務量が過大に 国会対応での深夜に及ぶ作業や、質問主意書の対応といった非生産的な業務が多い

このように、霞が関の国家公務員は、テイコウペンギンで描かれる「某企画」に勝るとも劣らないブラックっぷりを、遺憾なく発揮しています。

何なら、労働時間は「某企画」よりも過酷である上、残業の理由となる仕事内容も、某企画はまだクリエイティブな要素が感じられますが、国家公務員の場合、「国会対応」という生産性のない理由です。

加えて、この比較の時に注意しないといけないのは、

「某企画」はどこまで行ってもアニメの中のフィクションに過ぎないのに対し、霞が関の中央省庁で行われている国家公務員への仕打ちは、実話である、

ということ。

テイコウペンギンは、ギャグ要素も含むアニメですので、ブラック企業のブラックっぷりを、多少誇張気味に描いているシーンも見られますが…

そんなフィクションならではの誇張ですら、霞が関の国家公務員のブラックさには及ばないほどなのです。

ギャグで誇張されたフィクションより、過酷なリアル…。

国を支える国家公務員がこのような労働環境で良いのか、大変、心配になります。

まとめ

以上、今回は、アニメ「テイコウペンギン」で描かれる「某企画」と、霞が関で働く国家公務員の様子とを比較してみました。

ブラック企業のブラックっぷりを、動物を登場人物にしながらコミカルに描いた、テイコウペンギン。

しかし、そんなフィクションよりも、さらに過酷な世界が、霞が関の中央省庁という、我が国の中枢において、広がっているのです。

霞が関で働く多くの国家公務員は、テイコウペンギンを見ながら

「某企画、なんだかんだ言っても、うちよりはマシだなあ…」

と思っていることでしょう。

しかし、我が国を支える国家公務員の皆さんが、このような労働状況で働いていることは、決して国民のためになりません

このような労働状況が広く知られるにつれ、国家公務員を志望する人はどんどん減っていきますし、既に働いている優秀な職員さんたちも、転職に向けて動き始めています。

国家公務員の労働環境が過酷な理由は、国会対応業務が常軌を逸したものになっていることに集約されます。

国ももちろん、この状況は認識しているのですが、やはり歴史と伝統ある国会関係業務を改善することは難しく、協力をお願いしないといけない国会議員の先生方が選挙で選ばれている人たちであるということも相まって、この問題が解決する未来は、全く見えません。

アニメ「テイコウペンギン」は、ブラック企業の様子をコミカルに描き、問題提起している点において、非常に素晴らしいアニメです。

そしてもし、今後、もしテイコウペンギンで国家公務員の様子が描かれたら、よりこの問題が多くの人に伝わるんじゃないかな…そんなことを、期待とともに、妄想していたりしています。

どうかこの記事を通じて、国家公務員の過重労働問題、多くの人に理解され、課題意識が広がりますよう、心より願っております。

にほんブログ村 その他日記ブログ ロストジェネレーション世代へ