★この記事で分かること★
- ドラクエ4の「AI戦闘」が本当にAIと言えるのか
- ドラクエ4のAIのメカニズム
- 「クリフトがボスにザキを放つ」理由
- ドラクエの「AI」はどこまでが「AI」か
皆さん、こんにちは!けんた@ロスジェネ青春マガジン(@lost_gene_mag)です!
ICTやデジタル系のニュースを見ていると、目にしない日はない「AI」という言葉。
最近はChatGPTに関するニュースを目にすることも多いですが、これもAIの一種です。
実はこの「AI」、30年以上前の子どもたちは、当たり前のように触れていたのです。
それは何かというと、ドラゴンクエストシリーズの中でも、名作と名高いドラクエ4の「AI戦闘」。
本日は、ドラクエ4をファミコン版、PS版、DS版、スマホ版のすべてで徹底的にやりこんだ私が、そんな30年以上前に実装された「AI」について振り返るとともに、当時のAIが、本当の意味で「AI」たり得たのか、考察してみようと思います。
そして、この理由を考察することで、あの有名な「クリフトのザキ問題」の背景も見えてくるんです…。
ドラクエ3までの「マニュアル戦闘」
さて、皆さんおなじみのドラゴンクエストシリーズ。
このドラゴンクエストシリーズの醍醐味のひとつが、モンスターと戦う「戦闘」ですよね。
この「戦闘」は、ドラクエ3までは、一人一人が、何を行動するかを「コマンド」入力してプレイヤーが決めていました。
言うなれば「マニュアル戦闘」というものです。
この「マニュアル戦闘」、いかに効率的に強敵を倒し、冒険を円滑に進めるかという点においては非常に重要なものでありましたが…
一方で、単純作業になりがちな「レベル上げ」ではこれがめんどくさく感じたものでした。
ドラクエ4の「AI戦闘」
ところが、1990年に発売されたドラクエ4では、「AI戦闘」というものが導入されます。
これは、あらかじめプレイヤーが作戦を定めておくと、それに従って各キャラクターが、作戦に従って戦ってくれる、というもの。
それに加えて、各キャラクターは、戦闘を繰り返す中で敵の特性を「学習」し、次の戦闘では、その学習成果を行動に反映してくれる、といった点まで、このAI戦闘には盛り込まれていました。
「AI」=「Artificial Intelligence」=「人工知能」。
「敵の特性を学習し、次の戦闘でこれを反映」。
まさに、コンピューターが人間のように学習して戦ってくれる…多くの子どもたちは、この近未来的な技術に、心を躍らせたものでした。
AI学習前の不適切な行動は気づかない
と、このように、技術的には非常に心を躍らされた、この「AI戦闘」ですが、実はこれ、実際にゲームをプレイしていると、微妙にストレスに感じることがありました。
それは何か。
「敵の特性を学習し、次の戦闘でこれを反映」ということは、裏を返すと、
AIが敵の特性を学習する前は、知識不足ゆえに、不適切な行動を行ってしまう
ということだったのです。
とはいえ、このAIの弱点は、普段何気なく行っている戦闘の中では、あまり気になりません。
というのも、通常のザコ敵とは、レベル上げのなかで数え切れないほど戦うので、いつの間にかAIがそれらの敵の特性を学習しており、適切な行動を行えるようになっているため。
厳密には、ひょっとすると1度や2度は不適切な行動…たとえば効かない呪文を唱えたり、といった行動をしている可能性もあるのですが、1度くらいであれば気づかずにスルーしてしまいがちです。
「ボス戦でクリフトがザラキ」の理由
とはいえ、そんな「AIが学習前であること」に起因する不適切行動は、ある局面において顕在化します。
それも、ドラクエ4をやったことがある人なら、誰もが目にしたことのある形で。
それは何か。
そう、あの、あまりにも有名な…
クリフトの、ボスへのザキ・ザラキ
なんです。
ストーリーを進める中で相まみえるボスは、多くの場合、初めての戦いとなります。
このとき、AI戦闘を行っていると、AI未学習のキャラクターたちは
「もっとも効率的に敵を倒せる手段」
を、
「敵の特性・耐性にかかわらず」
選んで行動します。
クリフトの場合、もっとも効率的に敵を倒せる手段が、一撃必殺の「ザキ・ザラキ」。
なので、たとえ敵が耐性100%のボスであっても、それをAIとして学習していないがゆえに「ザキ・ザラキ」を連発してしまうのです。
ドラゴンクエスト4コママンガ劇場や、ネットなどでもよく話題にされる「クリフトのボスへのザキ・ザラキ」。
そう、あの滑稽な現象は、AIがボス敵の特性を未学習であるがゆえに、生じてしまうというわけなのです。
なお、ボスに一度敗れて、2回戦を挑むときには、クリフトのAIは、ボスの耐性を把握した状態で対峙することになりますので、「ザキ・ザラキ」を連発することはなくなります。
「ボスにザラキは効かない」は、人間だから知っている
この「クリフトのザラキ騒動」は、
という、ドラクエプレイヤーであれば当然のように知っている「常識」が前提となっているからこそ滑稽に思え、話のネタになります。
しかし、ドラクエ4のAIは…そして、そのAIが再現しようとしている、ゲーム内のキャラクターの脳内には、そんな「ゲームの外にいるプレイヤーの常識」など、インプットされていようがないのです。
「知識として知らないことは、行動に反映できない」
という、人間の知能であればごく当たり前のことが、実はこのドラクエ4のAIには、しっかり反映されていたのです。
そして「AI」から「オート戦闘」へ
そしてその後、ドラゴンクエストシリーズは、スーパーファミコンにハードを変えて「5、6」へ、そしてプレイステーションの「7」へと続いていきます。
この間、(SFC版のリメイク「3」を除き)、AI戦闘のスキームは継続していくことになるのですが…
こういった「ボスにザラキ」のクレームが大きかったのか、ドラクエ5以降、どんどんAIが初期状態から「賢く」なっていきます。
とりわけ、「6」では、初見のモンスターのHPを各キャラクターが完全に把握しており、残りHPに応じた攻撃手段で、図ったかのように最後の一撃を加えていく、ということが可能になっていました。
確かにこれ、非常に賢い行動とは思いましたが…
でも一方で、「インプットしていないはずの情報に基づいて行動している」という点は、もはや人工知能というよりも、プログラミングされた「戦闘の自動化」にすぎないとしか思えず…
なので、どこかAIよりも退化したように感じたのも、また事実でした。
まとめ
以上、今回は、ドラクエ4の「AI戦闘」を振り返りながら「AI=人工知能」による戦闘は何か、考えてみました。
人工知能は、経験に基づいて知識を得て、その知識に基づいて次の行動を決めるという、人間の学習行為を人工的に再現したもの。
なので、みんながネタにしている「クリフトの、ボスへのザラキ」も、一見おバカなように見えて、実はAI=人工知能の作り方としては、きわめてまっとうだ、ということになります。
そして、そんな人工知能を、30年以上前のファミコンという環境で作り上げていた、当時のエニックスチーム、そして堀井雄二さんには、ただただ、感服するばかりです。
あれから30年強…日々、メディアを通じて、AIの技術の進化に驚かされます。
そして、その驚きのたびに、ドラクエ4のこと、そして「ボスにザラキを放つクリフト」のこと…
少しだけでも、思い出してみようと思います。