★この記事で分かること★
- エフェクターブランド・Vivieの倒産
- Vivieが倒産した背景の考察
- プレイヤー出身のハンドメイド工房が抱える課題
- Vivieのおすすめエフェクター
皆さん、こんにちは!けんた@ロスジェネ青春マガジン(@lost_gene_mag)です!
ギタリスト・ベーシスト界隈において、衝撃的なニュースが話題になっています。
それは、
というもの。
プロからアマチュアまで、多くのギタリスト・ベーシストに愛用されているエフェクター、Vivieは、なぜ倒産に至ってしまったのか、そして今後は…。
本日は、本業で経営コンサルタント業務にもかかわっている私が、今回のVivieの倒産について、お話しさせていただこうと思います。
新鋭エフェクターブランド・Vivie
まず、そもそも、Vivieとはなんなのか、というお話です。
Vivieは、2015年に埼玉県川口市で創業した、新鋭のギター・ベースのエフェクターブランドです。
エフェクターブランドとしては、ローランドの「BOSS」ブランドをはじめとして、老舗の大手がひしめく中、音抜けが良く、分かりやすいサウンドを簡単に作れるエフェクターが話題となり、頭角を現していきます。
加えて、プロギタリストでもある「社長」と、「スタッフA」さんによるSNSでのPR戦略が話題となり、特にネットを主戦場とするギタリストの間で、非常に高い評価を得るに至りました。
拡大基調の商品戦略、一方で「アンチ」も増え…
そうしたVivieは、価格2万円前後という、比較的手を出しやすい価格帯で、使いやすいコンパクトエフェクターを次々とリリース。
また、「Vivie Professional」シリーズという上位ラインナップも作りましたが、こちらも3〜5万円程度という、高級エフェクターとしてはまだ買いやすい価格帯の商品が中心。
これらのエフェクターは、「分かりやすくて良い音」であったことと、「YouTubeの弾いてみた動画などでよく使われたこと」などから、SNSなどを中心に、大きな話題となります。
一方で、大きな話題となると、アンチが増えるのも世の常。
SNSやYouTubeで顔出しをし、賛否両論を巻き起こしながら話題を作っていくVivieの社長やスタッフAさんには、残念ながら批判的な声も多く寄せられる…
いわゆる「アンチがつく」というような状況になってしまいました。
加えて、続々と新商品を開発していくものの、「新商品開発⇒SNSでバズる⇒商品が売れる」という黄金パターンを繰り返せるだけの財務的な基盤はなかったのか…
Vivieは2023年9月、営業を終了し、破産申し立て手続きに入ることになるのです。
【お知らせ】
Vivieブランドを運営しております株式会社Cygnus Entertainmentは、既に業務を終了し、現在さいたま地方裁判所に対し破産手続き開始申立の準備中でございます。
これによりWEBサイトを閉鎖したり、関係者様と直接連絡がとれなくなるなどー
— Vivie (@Vivie_Effect) September 25, 2023
プレイヤー出身の楽器メーカー社長の問題点
さて、今回、Vivieの倒産において、ひとつ注目すべきファクターがあります。
それは、
Vivieの社長が、プレイヤー出身であった
ということ。
プレイヤー(ギタリスト・ベーシスト)出身の楽器メーカー社長は、自身がプレイヤーであるがゆえに、顧客であるプレイヤーの気持ちがよく分かります。
こういった、「ギタリストに寄り添う商品開発」は、お手の物です。
一方で、ギタリストは、所詮ギタリストであり、経営のプロではありません。
また、多くの場合、十分な社会人経験も有していないことが多く、「ビジネス」の経験値は希薄です。
そのため、財務面での体力を十分に鑑みないまま、商品開発へ突っ走ってしまった可能性は、十分に考えられます。
また、SNSへのアンチが増えていく様子を見ていると、情報発信が独りよがりになっていたり、やや攻撃的な発信なども目立ったりするようになっていたので、広報戦略についても冷静さを失っていたのかな…と見ることができます。
要するに、
- 短期的には、ギタリストとしての経験を活かした魅力的な商品を開発し、それが話題となって成功する
- 一方で、中長期的には、ビジネスの経験値が不足しているがゆえに、広報戦略、財務戦略などが我流に陥って失敗する
こういった現象が起こっていたのかな、と整理することができるのです。
気になった「自己顕示欲・承認欲求」
財務的体力を考えない商品開発と、独りよがりで攻撃的な広報戦略に共通するのは、
という現象です。
もともとミュージシャンは、自己顕示欲・承認欲求のかたまりのような職業です。
自らのすごさを、多くの人にアピールしたい。そして、そのすごさを多くの人から評価されたい…
そういう欲求がなければ、大成しない職業であります。
今回のVivieは、個々のエフェクターの商品は非常に魅力的でした。そしてその魅力は、社長自らが演奏するYouTube動画などで、力強くPRされていました。
しかし、そういった手法は、短期的には効果的であった一方で、中長期的には「社長の自己顕示欲・承認欲求」というふうに曲解され、アンチを生んでしまった。
また、それ以外のSNS投稿についても、賛否両論を巻き起こし、初期のころのような「牧歌的なほのぼのさ」はなくなっていった…。
一方で、新商品については、会社の経営状況がユーザーに明らかにならない中で、積極的に投入されていき、Vivieのすごさをアピールすることには必死になっていた…。
ビジネスが軌道に乗りかけた段階で、「自己顕示欲・承認欲求」と袂を分かつことができれば良かったのですが、そうならなかったことが、今回のVivie倒産を招いてしまったのかな…
そんなふうに、一連のVivieの様子を見ていると、考えさせられるものがあります。
Vivieだけじゃない!プレイヤー出身の新鋭工房は気をつけて
なお、今回はVivieがこのような結末を招いてしまっていますが…
このギター・ベース界隈、他にもプレイヤー出身の経営者が、短期的な成功にあぐらをかいて、SNSで暴走していたり、顧客や販売店などに非礼な態度で接している事例、続出しています。
具体的な名前はここでは控えますが、ハンドメイド系のギター工房などでそういった話が多々聞こえてくるところ、正直に言うと、いくつかあります。
新鋭工房が、「自己顕示欲と承認欲求」から脱却して、次のビジネスモデルに移行できない限り、きっと第二、第三のVivieが表れるでしょう。
フェンダーやヤマハ、エフェクター業界だとローランド(BOSS)といった大規模楽器メーカーと、新鋭の楽器メーカーが中長期的に渡り合うには、そういった「自己顕示欲・承認欲求をビジネスに昇華する」ための工夫が必要になるのです。
Vivieの主なエフェクター
さて、ここまで堅苦しい話を続けてきましたが…
一方で、「社長」「スタッフA」がここまで売り出して、そしてPRしてきたエフェクターは、いずれも魅力的なアイテムばかり。
そんなVivieのエフェクター、少し紹介してみようと思います。
なお、これらのエフェクター、現時点ではまだまだネット通販などで購入可能です。
今後、プレミアなどがつく可能性もありますから、欲しい方は、早めに購入されることをお勧めします!
(以下、PRを含みます)
【Wild Cat】扱いやすいオーバードライブ
「Wild Cat」は、Vivie初期の、比較的マイルドに歪むオーバードライブです。
TubeScreamer系の歪み方をするのですが、音抜けが非常によく、また歪み方もきめ細かくて上質。
価格も2万円前後と比較的お値頃で、筐体のオシャレさも相まって、大きな話題となり、大ヒット商品となりました。
【MINERVA】幅広く使える!実戦的なオーバードライブ
この「MINERVA」は、Wild Catと同じオーバードライブなのですが、こちらは「Vivie Professional」と、上位ラインナップからのリリースになっています。
このエフェクターは、スタジオアンプでの使用を強く意識しており、「JC/MS」という、スタジオアンプの定番2機種をスイッチで選んで、それぞれに最適化されたサウンドを出せるようになっています。
サウンドはWild Catよりも幅広く、さまざまな面でより実戦的に使えるようになっています。
【OwlMighty II】ベースプリアンプの新定番
続いて、こちらはベース向けの商品、「OwlMighty II」です。
「オールマイティー」と、ふくろうの「オウル(Owl)」をかけたこのプリアンプは、ベースそれ自体の音色を上質なものに底上げするプリアンプと、コンプレッサーと、それと歪みが一体になっています。
こちらも、ベース用アナログプリアンプとしては比較的低価格な設定も受けて、大ヒットとなります。
ベースのプリアンプといえば「サンズアンプ・ベースドライバー」が大定番となっている中、国産の新鋭メーカーから新たな定番商品が生まれたことは、ベーシストにとって、大変誇らしいものでした。
まとめ
以上、本日は、新鋭エフェクターメーカー・Vivieが突然倒産したことについて取り上げました。
多くのギタリスト・ベーシストに親しまれてきたVivieが、突然、倒産し、プレイヤー界隈には大きな衝撃を与えました。
商品が魅力的であり、また多くのエフェクターがヒットしていたがゆえに、あまり意識していませんでしたが、実はこのVivie、ビジネス的には課題を抱えていたように感じます。
プレイヤー出身の社長が前面に立つ形で商品開発やプロモーションが行われていましたが、それゆえにビジネスにおける経験値が不足しており、財務面や広報戦略面で甘さを露呈してしまったのかな…というふうに考察しています。
とはいえ、Vivieがこれまで世に送り出してきた商品の魅力は、Vivieが倒産した後も、色あせることはありません。
会社はなくなってしまうかもしれませんが、これからも、このVivieの魅力的なエフェクターの数々が、今後とも、ぜひ多くのプレイヤーに愛されること、心から願っています。